睡眠時間は足りているはずなのに、勉強していると眠くてたまらなくなる…会議の最中に睡魔に襲われる…という経験は誰にでもあると思います。睡眠時間が不足していれば、眠くなることも仕方ない気がしますが、そうでなくても眠気に襲われることってありますよね。なぜそんなふうに眠くなるのでしょうか? 逆にやる気が出てテンションが上がっているとき、集中しているときは眠くなりませんよね。今回は、やる気と眠気の関係についての研究報告を解説します。
側坐核に存在するアデノシン受容体がカギ
側坐核と眠気の関係に着目して、そのしくみを解明すべく研究したのは筑波大学の睡眠医科学について研究する部門。 マウスを使った実験で、側坐核と眠気の関係が明らかになってきました。 脳内の「側坐核」という部位は、モチベーションや報酬によって強化される行動に重要な関わりがあることがわかっています。この「側坐核」に多く存在する「アデノシン受容体」に着目し、マウスを用いた実験が行われました。 アデノシンは睡眠作用のある脳内物質で、その受容体をブロックすると、睡眠が阻害される、つまり「目がさえる」状態になります。コーヒーを飲むと眠くならないのは、カフェインにこの受容体をブロックする作用があるためなのです。
マウスが眠ったり、眼が冴えたり…
実験は、アデノシン受容体を作るニューロン(神経細胞)を人為的に操作できるマウスを使って行われました。このニューロンを選択的に刺激すると、睡眠が非常に強く誘発されることが実験で確認できたのです。つまり、側坐核のニューロンを刺激→アデノシン受容体が増える→眠くなる、という図式です。 逆にこのニューロンの活動を抑制すると、睡眠量が大きく減少しました。つまりニューロンの活動を抑制→目が冴える、というわけです。
モチベーションを上げると眠くならない
さらに実験は続きます!マウスに大好物のチョコレートや異性のマウス、気分の高まるおもちゃなど、モチベーションの上がるものを与えたところ、ニューロンの活動が低下し、睡眠量が減少することがわかりました。 つまり楽しい事、ドキドキすること、美味しいものなどモチベーションが上がるものによって、ニューロンの活動が低下し、側坐核のアデノシン受容体が減少して目が冴えるとこいう仕組みになっているのです。興奮していると眠くならない、退屈だと眠くなるのはこんな脳の仕組みによるものだったのですね。
最近では、急速なDX化やビジネスモデルの変化などにより、リスキリングの必要性が高まってきています。新しいことを学ぶ時にも「業務に必要だから」「(新しいことを)覚えないと困るから」と必要性で行うのではなく、「新しい知識やスキルを習得したら自分はどんな進化(変化)を遂げるのだろうか」「どのような価値を創出できるのだろう」とワクワクするイメージを持つことで、側坐核を刺激し、やる気が出てきます。
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https://holos-brains.jp/column/post-1322/