日常的な運動の習慣は心身の健康に良い、ということは周知の事実かと思います。ですが「運動後に人の記憶力が上昇する」という話はご存知でしたか?
スイスのジュネーブ大学の神経科学者が「Scientific Reports」に公表した論文により明らかとなったこのニュース。運動後に人の記憶力が向上するメカニズムについて、なるべく分かりやすくご紹介します!
海馬の働きを強める!脳内麻薬「エンドカンナビノイド」
運動によって記憶力がアップするメカニズムには、「エンドカンナビノイド」と呼ばれる脳内物質が深く関わっていることがこれまでの研究で明らかになっています。
エンドカンナビノイドはエンドルフィンなどと同じく「脳内麻薬」と呼ばれ、運動時に血中を循環することで当人に強い多幸感をもたらす成分です。
持久力を試されるマラソンやサイクリングなどのスポーツの中では特に効果を感じやすく、ランナーズハイなどと呼ばれています。
エンドカンナビノイドは、記憶に深く関係する海馬の働きを強める効果が確認されています。これが「運動による記憶力アップ」につながるのです。
より激しい運動の方が効果的
研究チームは、運動の負荷と記憶力アップの効果の関連を調べるために、被験者を以下の2チームに分けて運動とその後の学習テストを行いました。
Aチーム
中負荷のサイクリング(最大心拍数70%)を30分行う
Bチーム
高負荷のサイクリング(最大心拍数80%)を15分行う
学習テストの内容
・物理的に4つのボタンが付いた装置を用意する。
・被験者は事前に決められたパターンでボタンを12回押す。
・上記を10回繰り返し、所用時間を測る。
※全12回のパターンを記憶してしまえば、後はボタンを押すだけの単純作業。つまり、このテストは何回でボタンのパターンを記憶できるか測るテスト。
実験の結果、被験者Bチームは遥かにAチームよりテストの成績が良く、また後に行われたMRI検査でも海馬に流れている血流量が多いことが明らかとなりました。
さらに血液検査を行ったところ、エンドカンナビノイドの血中濃度もBチームの方が高いという結果がでました。
この研究によって、記憶力アップを目的に運動を行う際は、激しい運動を短時間行う方がより効率的ということが明らかになったのです。
スポーツでお手軽に記憶力アップ!
短時間で強めの運動をするだけで頭の働きが良くなる…夢のような話だと思いませんか?スポーツによる記憶力向上は安価でお手軽なのが大きな魅力!毎日息が上がる程度の運動するだけで、記憶力がアップするなら素晴らしいですよね。
重い負荷の運動だとより効率がいいそうですが、もちろん軽度の運動でもエンドカンナビノイドは分泌されます。毎日の通学や通勤で歩く距離を少し伸ばしてみるだけでも勉強や仕事の効率アップが見込めそうです。
短時間でOKなので、走れる方はぜひランニングを!エンドカンナビノイドをどんどん分泌して、脳を活性化する脳活ライフに挑戦してみてください。