年とれば、昔の記憶があいまいになったり、直近の出来事がなかなか思い出せなかったり…なんてことがちらほら出てきます。「まぁ年だから、物忘れも増えるか」とあまり気にしない人もいれば、「ひょっとして認知症なんじゃ…」と不安に感じる方もいるかもしれません。 今回は認知症と物忘れの違いについてカンタンに解説し、「物忘れの対策法」についてご紹介します! ※認知症の疑いがある場合は、医療機関にご相談ください。
「加齢による物忘れ」と「認知症」の違い
「記憶」はざっくり分けると「覚える→維持する→思い出す」の3つのプロセスに分類されます。加齢による物忘れの一番の原因となるのが3つ目の「思い出す」プロセス。これは脳の血流量が低下することによる作用だと言われています。 これに対し、認知症で問題が生じるのは1つ目の「覚える」プロセスです。昔のことや最近のことがなかなか思い出せないけれど、指摘されれば「ああ、それそれ」という方の大半は単なる「加齢による物忘れ」が起きているだけです。ご安心ください。逆にささいなことであっても日常生活に支障を来たし、周囲におかしいと指摘を受けるようだと「覚えられていない」認知症を疑う必要があります。 加齢による物忘れ ・見たはずのドラマの内容が思い出せない。 ・内容はなんとなく覚えている本の題名が出てこない。 ・朝食を食べた記憶はあるが、献立が思い出せない。 認知症が疑われるケース ・近所に散歩に出たら帰り道が分からなくなり迷ってしまう。 ・同じことを何度も話しており、他人にそれを指摘される。 ・食事をしたことを忘れる(一部ではなく、記憶の全体が欠落する)
寝不足・メタボ…生活習慣が悪いと物忘れが悪化
シンガポール国立大学医科大学院の研究で、「睡眠時間が短い高齢者ほど記憶力に衰えが見られる」という結果が明らかになっています。そもそも加齢により「思い出せない」現象が発生するのは脳の血流量低下によるもの、睡眠不足は脳の血流量を低下させるため、直接的に記憶力の低下に結びつくと考えられます。また、寝不足が常態化してしまうと、そもそも脳内の血管の機能自体が退行し、老化が早まってしまいます。 次にメタボリックシンドローム(内蔵脂肪症候群)が脳に与える悪影響についてです。運動不足や食べすぎが積み重ったメタボの方は、脂質異常や高血糖・高血圧といった症状により脳血管に負荷がかかり、こちらも「思い出し」を含めた様々な脳の機能を低下させてしまいます。 シンガポールで1500人以上を対象に6年間にわたり行われた追跡調査によると、メタボリックシンドロームと診断を受けた人はそうでない人に比べ、軽度認知障害(認知症の一歩手前)を発症する確率が1.75倍にも跳ね上がっており、単なる物忘れ以上のリスクがあることが伺えます。
物忘れ予防の4つの習慣
どうも睡眠不足とメタボは、物忘れや認知症を引き起こすリスクを引き上げるようです。なんとかならないものでしょうか…そこで!物忘れがすすみにくい4つの生活習慣をご紹介しましょう。 1.睡眠時間は7時間以上が理想 世界規模で見ても国民の睡眠不足が深刻と言われる日本。若い頃からの習慣で睡眠は基本6時間程度という方も多いのではないでしょうか?実は医学的には6時間の睡眠というのはやや不十分(個人差は有)とされており、脳の血流を十分に確保したいのであれば7時間程度の睡眠が推奨されます。 また、睡眠の時間だけではなく、質もしっかりと確保しておくことも大切です。 そのために… ・寝る直前にブルーライトや白色光など、光の刺激を受けないようにする ・眠気を感じてから床に就く。(寝られないと感じたら無理せず一度起きる) ・お風呂上がりから1~2時間後(深部体温がやや下がる頃)に就寝する ・寝だめはNG。休日も平日も寝る時間は一定に。 これらの生活習慣を心がけると、より良質な睡眠をとることができます。 2.肉・乳製品・青魚・ナッツを積極的に摂る 認知症物忘れ予防の他にも、健康に大きく関わってくる食事。バランスの良い献立であることは大切ですが、中でも認知機能を改善するといわれる4種の食品は積極的に食生活に取り入れていきましょう。 肉…おすすめは鶏むね肉。年を取ると肉を避けがちですが、お肉に含まれるイミダゾールジペプチドは認知機能を改善します。 乳製品…発酵乳に含まれるラクトナデカペプチドが記憶力を維持する効果を高めます。 青魚…イワシやサバに含まれるDHA・DPA・EPAは認知機能改善の効果アリ。特栄養価の高い旬の魚を積極的に食べましょう。 ナッツ…豊富なビタミンEが記憶力を支えます。ブロッコリーやほうれん草などの緑色野菜にも多く含まれています。 3.1日10分からでも、軽い運動をする 毎日の運動は、筋力や呼吸器の機能維持のほか、血流量の増加を促し記憶力の改善に繋がります。運動といってもハードで負荷の高いものである必要はありません。軽いウォーキングやヨガなど毎日続けられる内容にするのがおすすめです。 4.趣味を楽しみ、積極的に他人と関わる 物事に対して関心を持って取り組む・他者とのコミュニケーションなどの行動は「認知の予備力」の発達を促すと言われています。「認知の予備力」というのは、加齢により少なからず衰える脳機能を脳が自前でカバーしようとする働きのことです。例えば記憶に必要な情報回路の一つが衰えたとしても、日頃から活発に脳を使っていれば新しい回路がつながり、認知機能が実質的に維持されるのです。 年を取るにつれて、脳に流れる血流が減ってしまい、記憶力が低下するというのは避けようのない事実です。ですが、脳を活発に保つ生活習慣を続ければ、そういった脳へのダメージは軽減でき、また年を取ってからでも新しく脳細胞を育てることが可能なことも明らかになっています。 人生100年、とも謳われるこの時代。老後も健康で快活なライフを送りたいという方は、ぜひ「脳に良い生活」を意識してみてください!
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