皆さんはオキシトシンという神経伝達物質をご存知ですか？ オキシトシンとは、女性の母乳の分泌を促したりなど、出産や育児にも深く関わる脳内物質で、人が自身の愛おしいと思うものと触れ合う時により多く分泌されることから「愛情ホルモン」「幸せホルモン」などと呼ばれています。 実はこのオキシトシン、日々を豊かにしてくれるだけではなく、記憶力のアップやストレス低下にもつながっていることが明らかになっています。今回は、そんな幸せ愛情ホルモン「オキシトシン」が私たちの生活にどう影響を及ぼすのかをひもときます。

オキシトシンが記憶力にもたらす変化

動物実験では、子育ての授乳期間中の雌の新しいことを覚える力、「記銘力」が明らかに向上していることが判明しています。オキシトシンの分泌の多い時期ではありますが、記憶力のアップが実際にオキシトシンの影響なのかも実験で確認されています。 妊娠したことのないマウス2グループの片方だけにオキシトシンを注射します。餌の入った迷路に入れ、餌へと辿り着く時間を計測しました。すると、オキシトシンを注射されたグループの方が餌に到達するまでの時間が短くなったそうです。 集中力と記憶力を高めるとされるエンドルフィン、やる気が出る報酬系に関わるドーパミン、心を安らかにするセロトニンの働きにもオキシトシンは関係しています。オキシトシンの分泌量が増えると、QOL（生活の質）の向上につながることは間違いないでしょう。

オキシトシンには「信頼関係」を深める効果

オキシトシンにまつわる興味深い実験、クレアモント大学院大学経済学教授のP.J.ジャック氏の行った「信頼ゲーム」の結果を見てみましょう。 「信頼ゲーム」は互いを知らない被験者ABのペアによって行われます。まず、Aが所持金として10ドルを所持し、Bへといくら送金するかを決めます。すると送金した三倍の額がBの口座へと振り込まれ、その後送金してくれたAへと返金する機会が与えられます。 仮に5ドル送金した場合、Aの手元には5ドル残り、Bの口座には15ドル振り込まれます。Bがその後5ドル返金した場合、互いの手元には10ドルが残り双方の利益となりますが…仮にBが返金を行わなかった場合はAが一方的に損をする結果となってしまいます。同様にAがBに1ドルしか送らなかった場合は、Bは3ドルしか利益を得られません。 ゲーム内で問われるのは「信頼度」です。AはBが公正に返金をしてくれる相手かどうか、BはAが返金に値する相手かどうか、互いを信頼するかどうか考えます。この時、スプレーでオキシトシンを吸引するなどして摂取したグループは、「相手を信頼する・相手の信頼に応える」作用が高まることが判明したのです。 ビジネスにおいては欠かすことのできない信頼関係。信頼の基礎を築くためにはオキシトシンが有効だと言えそうです。（こっそり相手にオキシトシンを吸わせておく…のは難しそうですが）

オキシトシンを増やす方法

記憶力と集中力を高め、ストレスを緩和し、他者との信頼関係を築き上げてくれるオキシトシン。いいことづくめのこの脳内物質を増やすには、一体どのような生活習慣を心がければいいのでしょうか？ キーは「他者との触れ合い」にあります。 仕事や日常生活で不安やイライラを抱えた時、誰かに相談したことで心が軽くなったという経験は誰にでもあるはずです。オキシトシンは他者とのコミュニケーションを通して分泌が活発になり、また同時に接している相手にもオキシトシンの分泌を促す相互作用が確認されています。 「ありがとう」という感謝の気持ちを伝えることでも、オキシトシンの分泌はより活発になるとされます。これは口にした側も、言われた側も同様で、些細な相談でも「聞いてくれてありがとう」という言葉があるだけでオキシトシンは放出され、他者との信頼関係の醸成へとつながるそうです。 オキシトシンを分泌しやすい脳を作るには「他者への関心を持つ」ことが重要です。そもそも他者に関心が持てないという人は、ちょっとトレーニングをしてみましょう。心が動くような映画や小説に触れ、物語の中で大きく心を動かすと他者への共感性や関心、愛着を高めやすくなります。オキシトシン分泌トレーニング、仕事終わりや休日に、ぜひ実践してみてください！ 記憶力の活性化、ストレスフリーな環境、より良いビジネス関係にも役立つオキシトシン。誰かを頼り、頼られることで分泌されるこの脳内物質は、さまざまな方面で良い影響をもたらします。自分や周囲の人を幸せにするオキシトシン、どんどん出しましょう！エルティヴィーではためになる脳科学記事のほか、記憶力を脳のトリセツという切り口から劇的に改善させる研修を提供しています。生産性の向上にも結び付く新しいアプローチの研修です。どんな内容なのかな？と気になった方はお気軽に当社までお問い合わせください。