前回の記事はこちら>> 前回は、日本人の慢性的な睡眠不足や、原因のひとつであるストレスホルモン「コルチゾール」の効能や対処法についてご紹介しました。今回は、仕事や学業の都合でそもそも充分な睡眠を取れない…という方向けに「うたた寝」を上手く使った効果的な分割睡眠法を紹介します。
寝不足が引き起こすパフォーマンスの低下
日本人は慢性的な睡眠不足…では、実際どれぐらいの睡眠を取れば充分だと言えるのでしょうか?ペンシルバニア大学とワシントン大学の行った実験を見てみましょう。この実験では普段7~8時間の睡眠をとっている48名の健康的な男女が集められました。 4つのグループに分けて実験が行われたのですが、ある衝撃的な事実が浮かび上がったのです。 1番グループは1番の貧乏くじ…なんと3日間もの間一切睡眠をとらせてもらえません。2つめのグループでは一晩4時間の睡眠が許されています。3つめのグループでは一晩6時間。4つめのグループは一晩8時間眠ることが許されています。 2、3、4のグループはこの睡眠時間での生活を2週間継続。8時間の睡眠を行ったグループは14日の実験期間中、認知機能や運動能力の低下、注意散漫などといった寝不足特有の症状は現われませんでした。一方、4時間、6時間しか眠れなかった人たちは日に日に試験のパフォーマンスを悪化させていきます。 もちろん1番成績が悪かったのは4時間しか眠れなかったグループです。しかし、問題は6時間睡眠のグループ。なんと3日間眠れなかった1番グループの3日目の結果と同等だったのです。つまり6時間睡眠を2週間続けた人間の能力は、48時間一切睡眠をとっていない人と同程度まで低下していたということです! 前回の記事でも紹介した通り、日本人の平均睡眠時間は6時間22分。3番グループと大差のない数値です。寝不足のこわさを実感したところで、何か打開策はないか…睡眠という行為の本質について掘り下げながら考えてみます。
睡眠の持つ役割
睡眠は、「レム睡眠・ノンレム睡眠」の睡眠サイクルによって眠りの質は決定づけられます。レム睡眠は浅い睡眠で、目をつぶって寝ているように見えてもまぶたの下では眼球が激しく運動していることで知られています。 一方でノンレム睡眠は深い眠りで、ノンレム睡眠状態になると呼吸が規則的になって、肉体はリラックス。脳は外界からの刺激に対しても鈍いリアクションしかしなくなります。 人間にとって必須なのがこのノンレム睡眠です。深く眠ることによって下垂体からホルモンを分泌し、体を修復したり、免疫機能を保つことが可能になるからです。特に肉体に負荷がかかる生活をしている場合はよりノンレム睡眠が大切になるので、アスリートの中には11~12時間もの間連続して眠る人もいます。 一方、レム睡眠はノンレム睡眠と比べると”原始的な”眠りだと言えます。というのも、ノンレム睡眠は高度に大脳皮質の発達した生物特有のものだからです。魚類や爬虫類、両生類などはレム睡眠しか行わず、また人間の赤ちゃんにもノンレム睡眠はありません。成長に比例し、大脳皮質が発達することによってノンレム睡眠が徐々に発生し始めるのです。
記憶を処理するノンレム睡眠、感情を処理するレム睡眠
深い眠りであるノンレム睡眠は、記憶の整理や定着に必須です。ノンレム睡眠がきちんと取れない状態が続くと脳の認知機能の低下を招くこともあります。では仮眠や居眠り、うたた寝でとる浅い眠り、レム睡眠はどのような役割をしているのでしょう? レム睡眠の重要な役割は、感情を処理するという機能です。ノンレム睡眠が沈静的であるのに対し、レム睡眠は活性的な睡眠です。眼球がまぶたの下で激しく動く最中、レム睡眠状態の脳は直近の出来事やそれに付随する感情をテキパキと処理し、ストレスホルモンである「コルチゾール」の過度の分泌を抑制してくれるのです。 例えるなら、一日かけてきっちり部屋を整理整頓して掃除するのがノンレム睡眠。知人が来るので慌てて部屋を掃除して、散らかったものを棚や納戸に押し込むのがレム睡眠だといえます。 急場しのぎのレム睡眠だけではいつかボロが出てしまいますが、全く片付けをせずに仕事をする方が脳にとっても非効率ですよね。つまり、「うたた寝」は後でちゃんと整理整頓するけど、ひとまず仕事ができるように散らかった感情やストレスを処理しておこう!という行為なのです。 昼休みや通勤電車、仕事から帰った後の15分など、疲労やストレスを感じやすい時間に「うたた寝」を行うのはとても有効な睡眠法です。本眠であるノンレム睡眠を確保した上で、足りない眠りをひとまず仮眠で補う。時間に追われる日本人には、こんなスタイルが現実的かもしれません。 いかがでしたか?睡眠不足に悩む方は、ぜひうたた寝や仮眠を試してみてください。次回は分割睡眠の極みとも言える「Uberman(ウーベルマン)」睡眠法についてご紹介します!年商10億ドル企業、ワードプレスの親会社を作り上げたマット・マレンウェッグ氏も実践していたというその驚きの内容、効果はどのようなものなのでしょう。 次の記事はこちら>>
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