「香水やタバコの香りから、好きな人のことをふと思い出す」「草や土の匂いで子供の頃の想い出がよみがえる」…こんな経験ありませんか?特定の香りが記憶を呼び覚ますこの現象は、フランスの文豪マルセル・プルーストにちなんで「プルースト現象」と呼ばれています。 実は匂い・嗅覚は、他の感覚よりも人の記憶を呼び覚ます力が強いと言われています。記憶と香りは密接に絡みついていて、数多くの企業が「香り」を使った経営戦略を行っているほどです。 ちょっとロマンチックで面白い、香りと記憶の結びつきについて実例を挙げつつ紐解いていきましょう。
「香り」は人を無意識に反応させる
最初に挙げたような具体例は、かなりロマンチック…普通の人にはピンと来ないかもしれませんね。「香り」の身近な具体例として、大手ファストフードチェーンのマクドナルドの経営戦略に注目してみましょう。 皆さんは「マクドナルドの香り」と言われたらどんな匂いを想像しますか?おそらく、ポテトの揚がる芳ばしい香りを想像するのではないでしょうか。それこそ人の食欲を掻き立てるマクドナルドの経営戦略なのです。 ちなみに米国のマクドナルドではさらに積極的な経営戦略が行われています。ゴールデンタイムにカーラジオに乗っている顧客へと向けて、ポテトの上がる音を聴かせる広告を実施しているとか。 この時、人の脳内では面白い現象が起こります。まず音を聴いた客の脳には、カラっと揚がるポテトのイメージと、あの脳に染みついた香りがふんわりと漂ってくるのです。そして、この「香りの錯覚」が食欲と記憶を呼び覚まし、ドライバーをマックへと誘います。
匂いのもたらすマインドコントロール効果
香りがもたらす作用は、食欲に限ったことではありません。例えばアロマシス社という企業に務める香りの専門家は、「リゾートにふさわしい香り」をチョイスするのに一役を買っています。気持ちが高揚して陽気になったり、リラックスして鷹揚な気分になったり…すると財布のヒモも緩みがちに。これも経営戦略の一つです。 また、アメリカの葬儀場ではシナモンの香りを漂わせる風習があるそうです。今でこそ腐敗臭がすることは減りましたが、悪臭を誤魔化すと同時に家庭的で暖かなイメージを持つシナモンの香りによって葬儀の雰囲気を柔らかくする効果があります。日本ではお線香が近い役割をもっていますね。 食欲や高揚をもたらすのとは対照的に、鎮静や食欲抑制効果のある香りも。私たちが普段何気なく使う柔軟剤やシャンプー、化粧品にも香りは意図的に付けられているのです。気持ちのいい生活のために、家庭でアロマを使っている人も少なくありません。 香りが脳に作用するお話…いかがでしたか?普段何気なく嗅いでいる香りのひとつひとつが、記憶と強く結びつく可能性があるようです。漂ってくる香りと、沸き起こるイメージや記憶について意識してみると新たな発見がありそうですね。